俳句部会 2019年活動報告

俳句部会

さくら句会【第百五十八回】


                    令和元年十二月二十三日
                    於 桜新町区民集会所第二会議室

十二月の句会は、九名の参加により兼題の『冬日和』一句と自由句二句を持ち寄り行われました。
     披講 榎並俊一(俳号・恵那)

    (特選一) 四  山茶花や余白の多き日記帳      晃子
    (特選一) 四  住みにくき世やぎんなんを踏み歩く  勝     
    (特選一) 四  石壁に動かぬ蜂や冬日和       雪子


    (特選二) 三  老夫婦の袋小さし年の市       雪子
    (特選一) 三  あみ綱をむんずとたぐる冬の海    勝
    (特選一) 三  新家庭窓一杯のクリスマス      利水
    (特選一) 三  冬日和隅田の橋の五つ越え      利水
          三  冬麗異人のはしゃぐ交差点      恵那
          三  妻の切る冬至南瓜の硬さかな     兆弥

    (特選一) 二  さりげなく暮の家出る懐手      たか二
          二  冬銀河行き着く先の山暗し      恵那
          二  日の延びる兆しありたる冬至明け   兆弥

          一  渓の声闇に訪ねし冬の朝       牧羊
          一  降る雪や隠れ家めける酒亭の灯    広
          一  冬晴や火の見櫓の赤き屋根      晃子              
          一  冬日和気負ふて登る男坂       広
          一  七五三祝赤き柱の駅に降り      雪子
          一  空色の園児の帽子冬日和       たか二
          一  冬日和小鳥と菓子を分ちけり     利水
          一  立山の御座す駅前冬日和       牧水
          一  冬日和小さきかばんにシルバーパス  広

             紅と白馴染み無き名の並びをり    勝
             鳰や水面に出ては知らんぷり     牧羊
             青空の紙飛行機や冬日和       兆弥
             冬日和満員電車の密着度       恵那
             空へ伸び渋谷の街は年を越す     たか二
             日向ぼこ古き手紙の整理して     晃子

さくら句会【第百五十七回】


                    令和元年十一月二十五日
                    於 桜新町区民集会所第二会議室

十一月の句会は、九名の参加と二名の投句により兼題の『綿虫』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。     披講 江原利次(俳号・利水)

    (特選一) 五  ポケットにのど飴ふたつ冬に入る   雪子

    (特選一) 四  短日や書店の椅子の賑わひて     晃子

    (特選一) 三  綿虫や発寒といふ北の駅       広
          三  父の背に昼の匂いの小春かな     牧羊
          三  パステルを重ねるほどに濃き紅葉   勝

    (特選一) 二  紬織る機のリズムや雪蛍       たか二
    (特選一) 二  侘助や超高層の窓のふち       上馬の
    (特選一) 二  綿虫の浮遊眺めるシャッター街    利水
          二  日だまりの梢に小さき返り花     晃子
          二  綿虫や小樽運河に灯のともる     広
          二  峠越え雪虫来たる銀座かな      雪子
          二  猫の鼻かすめ落ちたる朴落葉     兆弥
          二  綿虫や天の高みを雲の往く      勝

    (特選一) 一  綿虫や息吹きかけて飛ばしけり    晃子
    (特選一) 一  潮騒に人声まじる憂国忌       まもる
    (特選一) 一  小夜時雨滲む灯火や道光る      利水
          一  綿虫や静かに暮るる川の町      広
          一  ドアノブの綿虫発つをしばし待つ   まもる
          一  埋立ての街に山茶花こぼれをり    雪子
          一  カシニョール真似る頬杖月の下    勝
          一  コンビニのおでん買ひ足す夕まぐれ  まもる
          一  ダイヤモンド富士なにごともなき日常 恵那
          一  綿虫や友はらからの無き国に     上馬の
          一  長谷寺やしぐれても遠き外舞台    たか二

             冬めくや義足の伯父に嫁した叔母   牧羊
             宙に舞ふ小さき命雪蛍        兆弥
             雪蛍いつもの酒に叱られる      恵那
             綿虫を背なに居眠る赤子かな     利水
             穴惑老境入りの俳諧師        上馬の
             ラグビーに沸き立つ国の不思議かな  たか二
             綿虫や同窓会の帰り道        牧羊
             ノーサイド笛の音待ちしラグビー戦  兆弥
             天皇車のナンバープレート山粧ふ   恵那

さくら句会【第百五十六回】


                    令和元年十月二十八日
                    於 桜新町区民集会所第二会議室

十月の句会は、十名の参加により兼題の『青蜜柑』一句と自由句二句を持ち寄り行われました。
              披講 富塚兆弥(俳号・兆弥)
    (特選一) 六  新米や移住家族の子沢山       雪子

    (特選一) 五  タンカーの巡る岬や青蜜柑      牧羊
    (特選一) 五  箱根路の銀の風なる芒原       晃子
    (特選一) 五  三振の子に投げてやる青みかん    雪子

    (特選一) 三  青蜜柑つめに香りの残りけり     晃子
          三  野分行き通い猫来ぬ勝手口      勝

    (特選一) 二  暁の朱色の空や小鳥来る       兆弥
    (特選一) 二  邪念なく柵なくて青蜜柑       恵那
          二  バラバラの家族あつめる青ミカン   上馬の
          二  秋出水二子玉川駅に魚        たか二
          二  水彩の筆とる人や秋日和       兆弥
          二  引き返すほどのことかと青蜜柑    牧羊
          二  退院の妻のほほえみ初秋刀魚     たか二

    (特選一) 一  望郷のゴリラのひとみ秋深し     雪子
    (特選一) 一  ひとつだけ色付き初めぬ青蜜柑    たか二
    (特選一) 一  ラグジャーで一つになって秋暑し   恵那
          一  山粧ふ色とりどりの車列あり     晃子
          一  訪ね来て姉弟分け合ふ青蜜柑     兆弥
          一  暴れ川流れし家の柿たわわ      利水
          一  明日のこと明日にしたいへこき虫   恵那
          一  抓られて椀へ鉢へと酢橘かな     牧羊
          一  ボサノバや萩の露台の趣味話し    勝

             雨降って色鳥過ぎる安房上総     上馬の
             栗拾い竹べらうまき餓鬼大将     利水
             着ぐるみのくまモンが売る青蜜柑   まもる
             青蜜柑摘むには惜しき風情かな    利水
             彼方より紅白の歌青みかん      勝
             ベランダに並ぶ花鉢小鳥来る     まもる
             鹿鳴くや千曲を越ゆる山の寺     上馬の
             夕風に衿元さびし寒露かな      まもる

さくら句会【第百五十五回】


                    令和元年九月二十三日
                    於 桜新町区民集会所第二会議室

九月の句会は、八名の参加者、二名の投句により兼題の『萩』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。  披講 暮田忠雄(俳号・上馬の)

    (特選二) 四  ぬか雨を宿して枝垂る萩の花     まもる
    (特選一) 四  表札に女名前や萩日和        雪子

    (特選二) 三  秋うらら僧と巡査の立ち話      たか二
    (特選一) 三  背を反らしヨガの指さす天高し    利水
          三  掃き寄せし木の葉山なす野分あと   まもる
          三  新涼や裾野駆けゆく天気雨      雪子

    (特選一) 二  望月や明日棟上げの槌の音      たか二
          二  遠富士に秋夕焼の紅あはし      まもる
          二  秋風や花束提げし老紳士       利水
          二  あれやこれ思ひ継ぎ間のぬくめ酒   勝
          二  安房はいま木守雨漏り野守草     上馬の
          二  逃げ帰る寝間の小窓の良夜かな    牧羊              
          二  蟷螂や目を三角に睨みをり      兆弥

    (特選一) 一  誰一人知らぬ町なり夜の萩      牧羊
          一  かかし居り関東平野睨むごと     勝
          一  螺髪なるとんがり帽子と団栗と    恵那
          一  行く道や萩こぼれたる奥の院     利水
          一  見得をきる子供歌舞伎や豊の秋    晃子
          一  サンバ祭レモンの尻の張り具合    恵那

             ヒマラヤ杉倒してゆきし野分かな   兆弥
             銀泥の残る短冊秋澄めり       雪子
             門の萩括り退院の妻を待つ      たか二
             あたらしや親子二代のプチトマト   上馬の
             送り出す夜業の工夫重き靴      牧羊
             課外活動の声突き抜けて萩日和    恵那
             雨やまず季語で遊びし獺祭忌     晃子
             乱れ咲くそぞろ歩きの萩の道     兆弥
             訪ねきし寺のここそこ萩の花     晃子
             稲城だぜ梨の新種の貰ひ物      上馬の
             猟銃を手に新酒飲る猛者男      勝

さくら句会【第百五十四回】

                    令和元年八月二十六日
                    於 桜新町区民集会所第二会議室

八月の句会は、七名の参加者、四名の投句により兼題の『柿』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。選句は一人六句選びました。
句会後有志五名で桜新町駅前の Hegira において暑気払いを行いました。
                    披講 津島晃一(俳号・牧羊)

          四  きっちりと裾そろひたり吊し柿    雪子

    (特選二) 三  かなかなや夕風生るる厨口      まもる
    (特選一) 三  照る柿や唐津の里の赤絵皿      利水
          三  柿食ふや喜寿の日日是好日      広
          三  毀たれし古里の家木守柿       たか二

    (特選一) 二  喪の家の灯のあかあかと夜の秋    雪子
    (特選一) 二  ガラス戸の蛾を浮き彫にいなびかり  まもる
          二  熱帯夜ガラスに写る鬼女の顔     上馬の
          二  生家いま住む人もなく柿実る     まもる
          二  土の香を振り撒き迫る夕立かな    利水
          二  盆の月一人楽しむ露天の湯      晃子
          二  秋灯や本も古りにし唐詩選      広              
          二  秋蝉や余命のかぎり鳴き通す     晃子


    (特選一) 一  九十九折り谷間に灯る柿たわわ    牧羊
    (特選一) 一  ちちはははモノクロームなり無月なり 恵那
          一  柿を剥くそばから柿が逃げてゆく   恵那
          一  羽化の蝉殻よりいでて落ちにけり   兆弥
          一  盆帰省娘のごつい腕三男児      牧羊
          一  長月や氣比の杜の松千本       上馬の
          一  一球打たれ野球部の夏終はる     広
          一  蔓草の屋根までつるみ夏深し     利水
          一  子沢山母屋に丹精の吊し柿      勝
          一  ぼた餅を作るしあわせ終戦忌     雪子

             柿食へば家の数なき過疎の村     晃子
             公園の草食む犬や秋旱        たか二
             やまんばの消えて半年遠花火     上馬の
             しがみついたベースでアウト夏終る  牧羊
             柿の実を啄む烏二羽三羽       兆弥
             風水震厄日の厄の五指を超え     たか二
             襟立てて隣同志や今朝の秋      勝
             佐久広しコスモス融つ遠あいさつ   勝
             締め切り日右目の端に良夜かな    恵那
             夕空に孤を描きたる秋の虹      兆弥

さくら句会【第百五十三回】


                    令和元年七月二十二日
                    於:桜新町区民集会所第一会議室

七月の句会は、七名の参加者、三名の投句により兼題の『花火』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。 披講 矢後勝洋(俳号・広)

          四  鮎釣の長き竿見え越に入る      雪子

    (特選一) 三  籠枕海の香のする風通る       晃子
          三  病棟に音のみ聞きし花火かな     雪子

    (特選一) 二  聞こえるも聞こえぬも又遠花火    上馬の
    (特選一) 二  客ありて祖母の茶に添ふ団扇かな   牧羊
    (特選一) 二  大見得や五秒遅れの遠花火      恵那
          二  花火の夜暗闇さへも華げる      広
          二  遠花火海より上りしだれけり     晃子

    (特選一) 一  鶏頭や旗艦沈みて生きる人      上馬の
    (特選一) 一  冷奴きみに角なし死角なし      恵那
    (特選一) 一  球場に東京音頭と揚花火       たか二
          一  金髪に白髪並ぶ夏期講座       利水
          一  北国の雨に濡れたる花火かな     広
          一  蜘蛛一匹右往左往の卓の上      兆弥
          一  炎昼の托鉢銀座和光前        たか二
          一  子の墓の前に咲き出づ捩花      上馬の
          一  梅雨空や満員電車の盲導犬      恵那
          一  肩車した子も子連れ花火見や     牧羊
          一  葛切や四条通りの大暖簾       たか二
          一  地に落ちし青柿くはへ鴉去る     まもる
          一  間遠なる風鈴の音にまどろめり    まもる
          一  山の端のぼんやり見ゆる二重虹    晃子
          一  手花火や過ぎゆく刻のいとほしき   まもる

             揚花火闇に人の世輝ひて       広
             風鈴や五百個連ね音さやか      兆弥
             空模様構ふことなし海開       牧羊
             遠花火湧く歓声の堤かな       兆弥
             暑きことは言はず越後上布着る    雪子
             花火師の描く瞬時の動画かな     利水
             梅雨じめり薬草風呂を独り占む    利水

さくら句会【第百五十二回】


                    令和元年六月二十四日
                    於:桜新町区民集会所第一会議室
六月の句会は、十名の参加者、二名の投句により兼題の『鮓』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。
                     披講 下田晃子(俳号・晃子)

    (特選一) 六  あじさいや父の句集に潜む母     恵那
    (特選一) 六  譲られし席のぬくもり走り梅雨    雪子

    (特選一) 五  もう履かぬ山靴みがく梅雨晴間    雪子

    (特選一) 三  寿司折を提げて昭和の父帰る     雪子       
          三  海光を返へす蜜柑の花の山      みづほ
          三  大和路や柿の葉鮨を家苞に      まもる
          三  荒梅雨の恐山まで至りけり      たか二

    (特選一) 二  宙を切り鳥の飛び込む瀑布かな    利水  
    (特選一) 二  五目鮨孫ミュンヘンへ鹿島立ち    たか二
    (特選一) 二  小田原は海と城なり小鯵鮓      広
    (特選一) 二  薄紅に陽の無き背戸の茗荷かな    勝
          二  鮒鮓や編集会議沸騰す        恵那
          二  香るごと白木磨かれ鮨一貫      牧羊

    (特選一) 一  あさぼらけ喉の渇きと熱帯魚     恵那
    (特選一) 一  熟鮨を買ふ途中下車里帰り      みづほ
          一  深夜便聞くや聞かずは明易し     牧羊
          一  十薬を喧嘩相手と分ち合ふ      たか二
          一  蛍火に真直なみちのなかりけり    みづほ
          一  仲入りに柿の葉鮓と酒一合      兆弥
          一  息つくや著莪で明るき峠道      牧羊
          一  手捻りの白磁の器さくらんぼ     晃子
          一  梅雨寒や体育館の床堅し       利水

             古都の夜の酒席のしめの杮鮓     晃子
             飽かず観る名もそれぞれの花菖蒲   まもる
             梅雨寒やせがむ子猫に添寝して    兆弥
             鮒鮓や花背の里に藍のれん      勝
             青梅を集めて家族の仲間入り     上馬の
             食通の鮨の話や江戸風情       利水
             この山にパンダと竹の子生れけり   上馬の
             エニシダの箒見付けて魔女となる   上馬の
             睡蓮や池の面わかつ赤と白      まもる
             甥夫婦開く魚屋つばめ魚       広
             店頭に新種の並ぶ濃紫陽花      晃子
             少年の銀河に思ふ億光年       勝
             軽鳬の子や親に続きて道渡る     兆弥
             風薫る芝生に広ぐ茶巾寿司      広

さくら句会【第百五十一回】


                    令和元年五月二十七日
                    於:桜新町区民集会所第一会議室

五月の句会は、九名の参加者、二名の投句により兼題の『筍』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。

 披講 田中勝(俳号・勝)

    (特選一) 五  分け入れば風の迷路や夏木立     勝


    (特選一) 四  山藤の風の形にゆらぎをり      晃子


    (特選二) 三  たかんなやちゃん付けで呼ぶクラス会 雪子
          三  紫陽花のせかされ咲くや季の乱れ   利水       

    (特選一) 二  青嵐男ことばの女学校        たか二
    (特選一) 二  妻の歩のこのごろ小し金銀花     まもる
    (特選一) 二  守宮の仔窓にをり外暮れてをり    みづほ
    (特選一) 二  さぐり足して竹の子を堀り始む    まもる
          二  黙祷の中過ぎ行けり若葉風      雪子
          二  レシピ添へ今朝の竹の子届きけり   晃子
          二  校長の訓話の声や桐の花       兆弥
          二  今年竹さはさは雨の降り出せり    広
          二  縁先に置かれし筍露光る       勝
          二  「竹の子は京のもんどす」祇園町    たか二

    (特選一) 一  葉桜やまた靴せがむ子の背丈     牧羊
          一  蝦夷地には生えぬ筍亡き母へ     広
          一  筍や古希まだ小僧ひとり酒      恵那
          一  尺取りの延び縮み行く真昼かな    兆弥
          一  ひとところ森の明るし山法師     まもる
          一  柏餅いつも独りの子に与ふ      たか二
          一  若竹や柱に残る古き疵        広
          一  明滅の蛍や蒼き闇に舞ふ       利水
          一  たかんなの穂先の新芽うすみどり   兆弥
          一  筍や一皮むけし新会員        牧羊

             竹の子や鎧の産衣まとい出づ     利水
             そっと見る息のちかくに天道虫    みづほ
             ダボシャツの袖たくしあげ皐月かな  恵那
             棹させど時は曲がらず改元日     恵那
             江戸褄や六月の庭風よぎる      勝
             筍掘り足裏へかすか土の盛り     みづほ
             隊商や楓樹の外の草いきれ      牧羊
             麦秋やフーテンの寅とすれ違ふ    雪子
             リビングの鏡にあふる青楓      晃子

さくら句会【第百五十回】


                    平成三十一年四月二十二日
                    於:桜新町区民集会所第一会議室

平成最後の四月の句会は、八名の参加者、二名の投句により兼題の『逃水』一句
と自由句二句を持ち寄り行われました。
     披講 松尾守(俳号・まもる)

     特選一) 四  海棠のひとひらこぼれをりしずか      恵那
          四  過ぎし日の夢をはこぶか花筏     まもる

          三  雪解けや鈴の音させて車椅子     雪子
          三  葉桜となりて間引かれ空広し     利水

    (特選一) 二  逃水の中を杖つく二人づれ      みづほ
    (特選一) 二  感嘆符の満つる行間弥生かな     恵那
          二  風乗せてふらここ揺れる日暮かな   晃子
          二  従順な乙女と逢ひし春の夢      たか二
          二  逃げ水や父の生家も建て替わり    牧羊
          二  千の窓灯るビル街月おぼろ      まもる
          二  逃水を追ひて八十路へ踏み入れり   利水
          二  まはり道して夜桜の中帰る      雪子
          二  逃水を消しゆく機影滑走路      みづほ

    (特選一) 一  蜘蛛の糸そよ風に揺れ見えかくれ   みづほ
    (特選一) 一  逃水を追ふやうに生き八十路いま   たか二
    (特選一) 一  逃水を追ひふるさとの遠ざかる    雪子
    (特選一) 一  春昼や会席膳で迷う箸        牧羊
    (特選一) 一  花筏流れ流れて崩れけり       晃子
          一  ベランダや色彩り競ふ五月来ぬ    利水
          一  逃げ水や旅にあるらし人の生     勝
          一  凌はれし池に落花の五六片      たか二

             薄紅と白の並木や花みずき      兆弥
             逃水や平らかなけふ和みをり     恵那
             潮干けて上総や広し月おぼろ     勝
             草餠の札に誘われ商店街       牧羊
             縁結び願ふおみくじ花の宮      兆弥
             逃水やママチャリの子眠りをり    晃子
             逃水に映りては消ゆビルの影     まもる
             逃水を追いかけて行く一本道     兆弥
             散る花を仰ぎ令花とつぶやけり    勝

さくら句会【第百四十九回】


                    平成三十一年三月二十五日
                    於:桜新町区民集会所第一会議室

三月の句会は、九名の参加者、二名の投句により兼題の『長閑』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。

 披講 榎並俊一(俳号・恵那)

    (特選二) 五  山茱萸の花けぶらせる絹の雨     まもる

    (特選一) 四  花の雨音なく回る観覧車       雪子
          四  一人居の私を外へ初桜        みづほ
          四  初蝶や通学の児の列乱る       兆弥

    (特選一) 三  白魚の笹の青さを透かしけり     みづほ
          三  暁の月ある空を鳥帰る        晃子
          三  長閑さや日がな一日ジャム作る    晃子

    (特選二) 二  三月の余白を埋めて顔洗う      恵那
    (特選一) 二  のどけしや自転車のせる渡し舟    雪子
    (特選一) 二  入彼岸朱色のわが名清めたり     たか二
    (特選一) 二  諸葛菜母校に育つ山羊羊       上馬の
          二  パラ駅伝コースを過るシャボン玉   雪子

          一  のどけしや縁側に茶と香の物     たか二
          一  ワイシャツや春めく街に肩光る    牧羊
          一  鳴き交し水面を駆くる鳰の恋     まもる
          一  病みて知る人の情や春の虹      たか二
          一  爪切りやのどかな縁の新聞紙     牧羊
          一  空耳に亡き夫の声春のどか      みづほ
          一  屋根替えの大工が古さ語る寺     牧羊
          一  のどかさを独り占めして猫眠る    兆弥
          一  清浄な気を満腔に春の雪       利水

             薄紅のほのかに色づき初桜      兆弥
             春風を添へてバルーンを渡しけり   利水
             花時のシャンと呼ばれしこの柩    上馬の
             モヤモヤともソワソワともなく春の宵 勝
             「でかけるよ~」戸締りトイレしてのどか 恵那
             擦りわさび涙のかすか異なる噂    勝
             長閑さや枝の小鳥の居眠れり     利水
             川岸の馬の尿する風長閑       上馬の
             啓蟄やスマホで遊ぶ幼き児      晃子
             みちのくや段丘に閑けさひた待てり  勝   
             呑兵衛の男泣きするスギ花粉     恵那
             のどけしや猫身繕ふ屋根の上     まもる

さくら句会【第百四十八回】

 
                     平成三十一年二月二十五日
                     於:桜新町区民集会所第一会議室

二月の句会は、九名の参加者、二名の投句により兼題の『薄氷』一句と自由句二句を持ち寄り行われました。

 披講 家井雪子(俳号・雪子)

    (特選一) 四  白鳥のしぶき煌めく助走かな     みづほ
    (特選二) 四  盛塩の崩れてゐたる春しぐれ     たか二 

          三  薄氷を柄杓で寄せる茶庭かな     利水
    (特選二) 三  薄氷や手を取るほどの仲となり    牧羊
          三  まな板の音冴返る夕厨        晃子
          三  薄氷を杖にて遊ぶ翁かな       たか二
    (特選一) 三  校庭の声弾け飛ぶ春北風       恵那

          二  裏庭の小さき窪みの薄氷       晃子
          二  一列に階段登る受験生        兆弥
          二  薄氷のすでに踏まれり通学路     雪子
    (特選一) 二  春めくやレモン色した月うるむ    まもる
    (特選一) 二  花言葉といふ名のカフェ春近し    雪子

          一  老いらくの恋はあきらか薄氷     上馬の
          一  バス待てば足元光る春氷       広
          一  うすらひや飯にバターのマッチング  上馬の
          一  振袖に触れこぼれ散る室の花     みづほ
          一  白き笠胸に海見る遍路かな      牧羊
          一  風強し薄氷ひかる橋の上       広
          一  行く道や枯野に松の道しるべ     利水
          一  夜の更けて風冴返る山の宿      晃子
          一  清元の会料峭の紀尾井坂       たか二
          一  青空に飛び立つ雀寒の明け      兆弥
    (特選一) 一  薄氷にのりて鴉のおよび腰      まもる
          一  囀や耳にとどいた暖色系       上馬の

             薄氷や喜寿にして病を得たり     広
             朝ぼらけ池に輝く薄氷        兆弥
             薄氷に乗って街並み破壊せり     恵那
             三間の坂にも名前梅開く       雪子
             草餅とペペロンチーノ並びをり    恵那
             春節や鮨に列なす異邦人       まもる
             紅梅やおぼこのやうに開きけり    利水
             薄氷や小川の水の滲みゐる      みづほ
             早春や裾のサテンが消えた街     牧羊

さくら句会【第百四十七回】

                     平成三十一年一月二十八日
                     於:桜新町区民集会所第一会議室

一月の句会は、八名の参加者、四名の投句により兼題の『福寿草』と自由句二句を持ち寄り行われました。

 披講 下田晃子(俳号・晃子)

          四  木鋏の音はじけたる寒の入り     利水

    (特選二) 三  寒茜遠く影絵のごとき富士      晃子
          三  嫁かぬ娘の集ふ座敷や初笑      雪子
    (特選二) 三  三代の屋号を閉じて春寒し      上馬の
          三  一月や朱塗りの下駄でバスにのる   上馬の

          二  誰が踏みし跡やひとすじ雪の原    雪子
          二  群れ水仙風のかたちに波なせり    勝
          二  今朝の句の一句を添へし初日記    晃子
          二  道問ふて道連れとなり福寿草     勝
          二  しぐるるや砂場に光る耳飾      広

          一  庭石の窪みに張りし初氷       まもる
          一  分け出づる勁き命よ福寿草      広
          一  瑞垣にトイプードルと福寿草     たか二
    (特選一) 一  寒卵届きて朝のかけごはん      兆弥
          一  活気めく街の遠きに山眠る      みづほ
          一  福寿草門なき家に住み古りて     広
          一  日脚伸ぶ小三治枕噺長々と      たか二
          一  隣り合ふ児に笑みもらふ初電車    まもる
          一  百年を生きる覚悟や福寿草      雪子 
    (特選一) 一  全集を買はぬ古書店寒波くる     たか二
          一  万両や鉢に値札の八百円       兆弥
    (特選一) 一  冬雉子のひと声貫けり草茫々     勝
    (特選一) 一  つつましくされど明かるし福寿草   まもる
          一  梅の花ぽつりぽつりと日を刻む    利水

             陽を受けて蕾を開く福寿草      兆弥
             道行や舞台の袖の福寿草       利水
             初春や爺ばかりのクラス会      恵那
             福寿草横丁に遊ぶ五六人       上馬の
             懐に知足忍ばせ初仕事        牧羊
             如月の行間埋める申告書       恵那
             平成の街並み靄る福寿草       恵那
             着膨れやしりとり聞こゆドアあたり  牧羊
             福寿草主役にしたき黄の力      みづほ
             七草粥早ばやと時過ぎゆきぬ     みづほ
             晩学や独り楽しむ福寿草       牧羊
             小箪笥の上に置かれし福寿草     晃子

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