さくら句会【第百五十八回】
令和元年十二月二十三日
於 桜新町区民集会所第二会議室
十二月の句会は、九名の参加により兼題の『冬日和』一句と自由句二句を持ち寄り行われました。
披講 榎並俊一(俳号・恵那)
(特選一) 四 山茶花や余白の多き日記帳 晃子
(特選一) 四 住みにくき世やぎんなんを踏み歩く 勝
(特選一) 四 石壁に動かぬ蜂や冬日和 雪子
(特選二) 三 老夫婦の袋小さし年の市 雪子
(特選一) 三 あみ綱をむんずとたぐる冬の海 勝
(特選一) 三 新家庭窓一杯のクリスマス 利水
(特選一) 三 冬日和隅田の橋の五つ越え 利水
三 冬麗異人のはしゃぐ交差点 恵那
三 妻の切る冬至南瓜の硬さかな 兆弥
(特選一) 二 さりげなく暮の家出る懐手 たか二
二 冬銀河行き着く先の山暗し 恵那
二 日の延びる兆しありたる冬至明け 兆弥
一 渓の声闇に訪ねし冬の朝 牧羊
一 降る雪や隠れ家めける酒亭の灯 広
一 冬晴や火の見櫓の赤き屋根 晃子
一 冬日和気負ふて登る男坂 広
一 七五三祝赤き柱の駅に降り 雪子
一 空色の園児の帽子冬日和 たか二
一 冬日和小鳥と菓子を分ちけり 利水
一 立山の御座す駅前冬日和 牧水
一 冬日和小さきかばんにシルバーパス 広
紅と白馴染み無き名の並びをり 勝
鳰や水面に出ては知らんぷり 牧羊
青空の紙飛行機や冬日和 兆弥
冬日和満員電車の密着度 恵那
空へ伸び渋谷の街は年を越す たか二
日向ぼこ古き手紙の整理して 晃子
さくら句会【第百五十七回】
令和元年十一月二十五日
於 桜新町区民集会所第二会議室
十一月の句会は、九名の参加と二名の投句により兼題の『綿虫』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。 披講 江原利次(俳号・利水)
(特選一) 五 ポケットにのど飴ふたつ冬に入る 雪子
(特選一) 四 短日や書店の椅子の賑わひて 晃子
(特選一) 三 綿虫や発寒といふ北の駅 広
三 父の背に昼の匂いの小春かな 牧羊
三 パステルを重ねるほどに濃き紅葉 勝
(特選一) 二 紬織る機のリズムや雪蛍 たか二
(特選一) 二 侘助や超高層の窓のふち 上馬の
(特選一) 二 綿虫の浮遊眺めるシャッター街 利水
二 日だまりの梢に小さき返り花 晃子
二 綿虫や小樽運河に灯のともる 広
二 峠越え雪虫来たる銀座かな 雪子
二 猫の鼻かすめ落ちたる朴落葉 兆弥
二 綿虫や天の高みを雲の往く 勝
(特選一) 一 綿虫や息吹きかけて飛ばしけり 晃子
(特選一) 一 潮騒に人声まじる憂国忌 まもる
(特選一) 一 小夜時雨滲む灯火や道光る 利水
一 綿虫や静かに暮るる川の町 広
一 ドアノブの綿虫発つをしばし待つ まもる
一 埋立ての街に山茶花こぼれをり 雪子
一 カシニョール真似る頬杖月の下 勝
一 コンビニのおでん買ひ足す夕まぐれ まもる
一 ダイヤモンド富士なにごともなき日常 恵那
一 綿虫や友はらからの無き国に 上馬の
一 長谷寺やしぐれても遠き外舞台 たか二
冬めくや義足の伯父に嫁した叔母 牧羊
宙に舞ふ小さき命雪蛍 兆弥
雪蛍いつもの酒に叱られる 恵那
綿虫を背なに居眠る赤子かな 利水
穴惑老境入りの俳諧師 上馬の
ラグビーに沸き立つ国の不思議かな たか二
綿虫や同窓会の帰り道 牧羊
ノーサイド笛の音待ちしラグビー戦 兆弥
天皇車のナンバープレート山粧ふ 恵那
さくら句会【第百五十六回】
令和元年十月二十八日
於 桜新町区民集会所第二会議室
十月の句会は、十名の参加により兼題の『青蜜柑』一句と自由句二句を持ち寄り行われました。
披講 富塚兆弥(俳号・兆弥)
(特選一) 六 新米や移住家族の子沢山 雪子
(特選一) 五 タンカーの巡る岬や青蜜柑 牧羊
(特選一) 五 箱根路の銀の風なる芒原 晃子
(特選一) 五 三振の子に投げてやる青みかん 雪子
(特選一) 三 青蜜柑つめに香りの残りけり 晃子
三 野分行き通い猫来ぬ勝手口 勝
(特選一) 二 暁の朱色の空や小鳥来る 兆弥
(特選一) 二 邪念なく柵なくて青蜜柑 恵那
二 バラバラの家族あつめる青ミカン 上馬の
二 秋出水二子玉川駅に魚 たか二
二 水彩の筆とる人や秋日和 兆弥
二 引き返すほどのことかと青蜜柑 牧羊
二 退院の妻のほほえみ初秋刀魚 たか二
(特選一) 一 望郷のゴリラのひとみ秋深し 雪子
(特選一) 一 ひとつだけ色付き初めぬ青蜜柑 たか二
(特選一) 一 ラグジャーで一つになって秋暑し 恵那
一 山粧ふ色とりどりの車列あり 晃子
一 訪ね来て姉弟分け合ふ青蜜柑 兆弥
一 暴れ川流れし家の柿たわわ 利水
一 明日のこと明日にしたいへこき虫 恵那
一 抓られて椀へ鉢へと酢橘かな 牧羊
一 ボサノバや萩の露台の趣味話し 勝
雨降って色鳥過ぎる安房上総 上馬の
栗拾い竹べらうまき餓鬼大将 利水
着ぐるみのくまモンが売る青蜜柑 まもる
青蜜柑摘むには惜しき風情かな 利水
彼方より紅白の歌青みかん 勝
ベランダに並ぶ花鉢小鳥来る まもる
鹿鳴くや千曲を越ゆる山の寺 上馬の
夕風に衿元さびし寒露かな まもる
さくら句会【第百五十五回】
令和元年九月二十三日
於 桜新町区民集会所第二会議室
九月の句会は、八名の参加者、二名の投句により兼題の『萩』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。 披講 暮田忠雄(俳号・上馬の)
(特選二) 四 ぬか雨を宿して枝垂る萩の花 まもる
(特選一) 四 表札に女名前や萩日和 雪子
(特選二) 三 秋うらら僧と巡査の立ち話 たか二
(特選一) 三 背を反らしヨガの指さす天高し 利水
三 掃き寄せし木の葉山なす野分あと まもる
三 新涼や裾野駆けゆく天気雨 雪子
(特選一) 二 望月や明日棟上げの槌の音 たか二
二 遠富士に秋夕焼の紅あはし まもる
二 秋風や花束提げし老紳士 利水
二 あれやこれ思ひ継ぎ間のぬくめ酒 勝
二 安房はいま木守雨漏り野守草 上馬の
二 逃げ帰る寝間の小窓の良夜かな 牧羊
二 蟷螂や目を三角に睨みをり 兆弥
(特選一) 一 誰一人知らぬ町なり夜の萩 牧羊
一 かかし居り関東平野睨むごと 勝
一 螺髪なるとんがり帽子と団栗と 恵那
一 行く道や萩こぼれたる奥の院 利水
一 見得をきる子供歌舞伎や豊の秋 晃子
一 サンバ祭レモンの尻の張り具合 恵那
ヒマラヤ杉倒してゆきし野分かな 兆弥
銀泥の残る短冊秋澄めり 雪子
門の萩括り退院の妻を待つ たか二
あたらしや親子二代のプチトマト 上馬の
送り出す夜業の工夫重き靴 牧羊
課外活動の声突き抜けて萩日和 恵那
雨やまず季語で遊びし獺祭忌 晃子
乱れ咲くそぞろ歩きの萩の道 兆弥
訪ねきし寺のここそこ萩の花 晃子
稲城だぜ梨の新種の貰ひ物 上馬の
猟銃を手に新酒飲る猛者男 勝
さくら句会【第百五十四回】
令和元年八月二十六日
於 桜新町区民集会所第二会議室
八月の句会は、七名の参加者、四名の投句により兼題の『柿』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。選句は一人六句選びました。
句会後有志五名で桜新町駅前の Hegira において暑気払いを行いました。
披講 津島晃一(俳号・牧羊)
四 きっちりと裾そろひたり吊し柿 雪子
(特選二) 三 かなかなや夕風生るる厨口 まもる
(特選一) 三 照る柿や唐津の里の赤絵皿 利水
三 柿食ふや喜寿の日日是好日 広
三 毀たれし古里の家木守柿 たか二
(特選一) 二 喪の家の灯のあかあかと夜の秋 雪子
(特選一) 二 ガラス戸の蛾を浮き彫にいなびかり まもる
二 熱帯夜ガラスに写る鬼女の顔 上馬の
二 生家いま住む人もなく柿実る まもる
二 土の香を振り撒き迫る夕立かな 利水
二 盆の月一人楽しむ露天の湯 晃子
二 秋灯や本も古りにし唐詩選 広
二 秋蝉や余命のかぎり鳴き通す 晃子
(特選一) 一 九十九折り谷間に灯る柿たわわ 牧羊
(特選一) 一 ちちはははモノクロームなり無月なり 恵那
一 柿を剥くそばから柿が逃げてゆく 恵那
一 羽化の蝉殻よりいでて落ちにけり 兆弥
一 盆帰省娘のごつい腕三男児 牧羊
一 長月や氣比の杜の松千本 上馬の
一 一球打たれ野球部の夏終はる 広
一 蔓草の屋根までつるみ夏深し 利水
一 子沢山母屋に丹精の吊し柿 勝
一 ぼた餅を作るしあわせ終戦忌 雪子
柿食へば家の数なき過疎の村 晃子
公園の草食む犬や秋旱 たか二
やまんばの消えて半年遠花火 上馬の
しがみついたベースでアウト夏終る 牧羊
柿の実を啄む烏二羽三羽 兆弥
風水震厄日の厄の五指を超え たか二
襟立てて隣同志や今朝の秋 勝
佐久広しコスモス融つ遠あいさつ 勝
締め切り日右目の端に良夜かな 恵那
夕空に孤を描きたる秋の虹 兆弥
さくら句会【第百五十三回】
令和元年七月二十二日
於:桜新町区民集会所第一会議室
七月の句会は、七名の参加者、三名の投句により兼題の『花火』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。 披講 矢後勝洋(俳号・広)
四 鮎釣の長き竿見え越に入る 雪子
(特選一) 三 籠枕海の香のする風通る 晃子
三 病棟に音のみ聞きし花火かな 雪子
(特選一) 二 聞こえるも聞こえぬも又遠花火 上馬の
(特選一) 二 客ありて祖母の茶に添ふ団扇かな 牧羊
(特選一) 二 大見得や五秒遅れの遠花火 恵那
二 花火の夜暗闇さへも華げる 広
二 遠花火海より上りしだれけり 晃子
(特選一) 一 鶏頭や旗艦沈みて生きる人 上馬の
(特選一) 一 冷奴きみに角なし死角なし 恵那
(特選一) 一 球場に東京音頭と揚花火 たか二
一 金髪に白髪並ぶ夏期講座 利水
一 北国の雨に濡れたる花火かな 広
一 蜘蛛一匹右往左往の卓の上 兆弥
一 炎昼の托鉢銀座和光前 たか二
一 子の墓の前に咲き出づ捩花 上馬の
一 梅雨空や満員電車の盲導犬 恵那
一 肩車した子も子連れ花火見や 牧羊
一 葛切や四条通りの大暖簾 たか二
一 地に落ちし青柿くはへ鴉去る まもる
一 間遠なる風鈴の音にまどろめり まもる
一 山の端のぼんやり見ゆる二重虹 晃子
一 手花火や過ぎゆく刻のいとほしき まもる
揚花火闇に人の世輝ひて 広
風鈴や五百個連ね音さやか 兆弥
空模様構ふことなし海開 牧羊
遠花火湧く歓声の堤かな 兆弥
暑きことは言はず越後上布着る 雪子
花火師の描く瞬時の動画かな 利水
梅雨じめり薬草風呂を独り占む 利水
さくら句会【第百五十二回】
令和元年六月二十四日
於:桜新町区民集会所第一会議室
六月の句会は、十名の参加者、二名の投句により兼題の『鮓』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。
披講 下田晃子(俳号・晃子)
(特選一) 六 あじさいや父の句集に潜む母 恵那
(特選一) 六 譲られし席のぬくもり走り梅雨 雪子
(特選一) 五 もう履かぬ山靴みがく梅雨晴間 雪子
(特選一) 三 寿司折を提げて昭和の父帰る 雪子
三 海光を返へす蜜柑の花の山 みづほ
三 大和路や柿の葉鮨を家苞に まもる
三 荒梅雨の恐山まで至りけり たか二
(特選一) 二 宙を切り鳥の飛び込む瀑布かな 利水
(特選一) 二 五目鮨孫ミュンヘンへ鹿島立ち たか二
(特選一) 二 小田原は海と城なり小鯵鮓 広
(特選一) 二 薄紅に陽の無き背戸の茗荷かな 勝
二 鮒鮓や編集会議沸騰す 恵那
二 香るごと白木磨かれ鮨一貫 牧羊
(特選一) 一 あさぼらけ喉の渇きと熱帯魚 恵那
(特選一) 一 熟鮨を買ふ途中下車里帰り みづほ
一 深夜便聞くや聞かずは明易し 牧羊
一 十薬を喧嘩相手と分ち合ふ たか二
一 蛍火に真直なみちのなかりけり みづほ
一 仲入りに柿の葉鮓と酒一合 兆弥
一 息つくや著莪で明るき峠道 牧羊
一 手捻りの白磁の器さくらんぼ 晃子
一 梅雨寒や体育館の床堅し 利水
古都の夜の酒席のしめの杮鮓 晃子
飽かず観る名もそれぞれの花菖蒲 まもる
梅雨寒やせがむ子猫に添寝して 兆弥
鮒鮓や花背の里に藍のれん 勝
青梅を集めて家族の仲間入り 上馬の
食通の鮨の話や江戸風情 利水
この山にパンダと竹の子生れけり 上馬の
エニシダの箒見付けて魔女となる 上馬の
睡蓮や池の面わかつ赤と白 まもる
甥夫婦開く魚屋つばめ魚 広
店頭に新種の並ぶ濃紫陽花 晃子
少年の銀河に思ふ億光年 勝
軽鳬の子や親に続きて道渡る 兆弥
風薫る芝生に広ぐ茶巾寿司 広
さくら句会【第百五十一回】
令和元年五月二十七日
於:桜新町区民集会所第一会議室
五月の句会は、九名の参加者、二名の投句により兼題の『筍』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。
披講 田中勝(俳号・勝)
(特選一) 五 分け入れば風の迷路や夏木立 勝
(特選一) 四 山藤の風の形にゆらぎをり 晃子
(特選二) 三 たかんなやちゃん付けで呼ぶクラス会 雪子
三 紫陽花のせかされ咲くや季の乱れ 利水
(特選一) 二 青嵐男ことばの女学校 たか二
(特選一) 二 妻の歩のこのごろ小し金銀花 まもる
(特選一) 二 守宮の仔窓にをり外暮れてをり みづほ
(特選一) 二 さぐり足して竹の子を堀り始む まもる
二 黙祷の中過ぎ行けり若葉風 雪子
二 レシピ添へ今朝の竹の子届きけり 晃子
二 校長の訓話の声や桐の花 兆弥
二 今年竹さはさは雨の降り出せり 広
二 縁先に置かれし筍露光る 勝
二 「竹の子は京のもんどす」祇園町 たか二
(特選一) 一 葉桜やまた靴せがむ子の背丈 牧羊
一 蝦夷地には生えぬ筍亡き母へ 広
一 筍や古希まだ小僧ひとり酒 恵那
一 尺取りの延び縮み行く真昼かな 兆弥
一 ひとところ森の明るし山法師 まもる
一 柏餅いつも独りの子に与ふ たか二
一 若竹や柱に残る古き疵 広
一 明滅の蛍や蒼き闇に舞ふ 利水
一 たかんなの穂先の新芽うすみどり 兆弥
一 筍や一皮むけし新会員 牧羊
竹の子や鎧の産衣まとい出づ 利水
そっと見る息のちかくに天道虫 みづほ
ダボシャツの袖たくしあげ皐月かな 恵那
棹させど時は曲がらず改元日 恵那
江戸褄や六月の庭風よぎる 勝
筍掘り足裏へかすか土の盛り みづほ
隊商や楓樹の外の草いきれ 牧羊
麦秋やフーテンの寅とすれ違ふ 雪子
リビングの鏡にあふる青楓 晃子
さくら句会【第百五十回】
平成三十一年四月二十二日
於:桜新町区民集会所第一会議室
平成最後の四月の句会は、八名の参加者、二名の投句により兼題の『逃水』一句
と自由句二句を持ち寄り行われました。
披講 松尾守(俳号・まもる)
特選一) 四 海棠のひとひら零れをり閑 恵那
四 過ぎし日の夢をはこぶか花筏 まもる
三 雪解けや鈴の音させて車椅子 雪子
三 葉桜となりて間引かれ空広し 利水
(特選一) 二 逃水の中を杖つく二人づれ みづほ
(特選一) 二 感嘆符の満つる行間弥生かな 恵那
二 風乗せてふらここ揺れる日暮かな 晃子
二 従順な乙女と逢ひし春の夢 たか二
二 逃げ水や父の生家も建て替わり 牧羊
二 千の窓灯るビル街月おぼろ まもる
二 逃水を追ひて八十路へ踏み入れり 利水
二 まはり道して夜桜の中帰る 雪子
二 逃水を消しゆく機影滑走路 みづほ
(特選一) 一 蜘蛛の糸そよ風に揺れ見えかくれ みづほ
(特選一) 一 逃水を追ふやうに生き八十路いま たか二
(特選一) 一 逃水を追ひふるさとの遠ざかる 雪子
(特選一) 一 春昼や会席膳で迷う箸 牧羊
(特選一) 一 花筏流れ流れて崩れけり 晃子
一 ベランダや色彩り競ふ五月来ぬ 利水
一 逃げ水や旅にあるらし人の生 勝
一 凌はれし池に落花の五六片 たか二
薄紅と白の並木や花みずき 兆弥
逃水や平らかなけふ和みをり 恵那
潮干けて上総や広し月おぼろ 勝
草餠の札に誘われ商店街 牧羊
縁結び願ふおみくじ花の宮 兆弥
逃水やママチャリの子眠りをり 晃子
逃水に映りては消ゆビルの影 まもる
逃水を追いかけて行く一本道 兆弥
散る花を仰ぎ令花とつぶやけり 勝
さくら句会【第百四十九回】
平成三十一年三月二十五日
於:桜新町区民集会所第一会議室
三月の句会は、九名の参加者、二名の投句により兼題の『長閑』一句と
自由句二句を持ち寄り行われました。
披講 榎並俊一(俳号・恵那)
(特選二) 五 山茱萸の花けぶらせる絹の雨 まもる
(特選一) 四 花の雨音なく回る観覧車 雪子
四 一人居の私を外へ初桜 みづほ
四 初蝶や通学の児の列乱る 兆弥
(特選一) 三 白魚の笹の青さを透かしけり みづほ
三 暁の月ある空を鳥帰る 晃子
三 長閑さや日がな一日ジャム作る 晃子
(特選二) 二 三月の余白を埋めて顔洗う 恵那
(特選一) 二 のどけしや自転車のせる渡し舟 雪子
(特選一) 二 入彼岸朱色のわが名清めたり たか二
(特選一) 二 諸葛菜母校に育つ山羊羊 上馬の
二 パラ駅伝コースを過るシャボン玉 雪子
一 のどけしや縁側に茶と香の物 たか二
一 ワイシャツや春めく街に肩光る 牧羊
一 鳴き交し水面を駆くる鳰の恋 まもる
一 病みて知る人の情や春の虹 たか二
一 爪切りやのどかな縁の新聞紙 牧羊
一 空耳に亡き夫の声春のどか みづほ
一 屋根替えの大工が古さ語る寺 牧羊
一 のどかさを独り占めして猫眠る 兆弥
一 清浄な気を満腔に春の雪 利水
薄紅のほのかに色づき初桜 兆弥
春風を添へてバルーンを渡しけり 利水
花時のシャンと呼ばれしこの柩 上馬の
モヤモヤともソワソワともなく春の宵 勝
「でかけるよ~」戸締りトイレしてのどか 恵那
擦りわさび涙のかすか異なる噂 勝
長閑さや枝の小鳥の居眠れり 利水
川岸の馬の尿する風長閑 上馬の
啓蟄やスマホで遊ぶ幼き児 晃子
みちのくや段丘に閑けさひた待てり 勝
呑兵衛の男泣きするスギ花粉 恵那
のどけしや猫身繕ふ屋根の上 まもる
さくら句会【第百四十八回】
平成三十一年二月二十五日
於:桜新町区民集会所第一会議室
二月の句会は、九名の参加者、二名の投句により兼題の『薄氷』一句と自由句二句を持ち寄り行われました。
披講 家井雪子(俳号・雪子)
(特選一) 四 白鳥のしぶき煌めく助走かな みづほ
(特選二) 四 盛塩の崩れてゐたる春しぐれ たか二
三 薄氷を柄杓で寄せる茶庭かな 利水
(特選二) 三 薄氷や手を取るほどの仲となり 牧羊
三 まな板の音冴返る夕厨 晃子
三 薄氷を杖にて遊ぶ翁かな たか二
(特選一) 三 校庭の声弾け飛ぶ春北風 恵那
二 裏庭の小さき窪みの薄氷 晃子
二 一列に階段登る受験生 兆弥
二 薄氷のすでに踏まれり通学路 雪子
(特選一) 二 春めくやレモン色した月うるむ まもる
(特選一) 二 花言葉といふ名のカフェ春近し 雪子
一 老いらくの恋はあきらか薄氷 上馬の
一 バス待てば足元光る春氷 広
一 うすらひや飯にバターのマッチング 上馬の
一 振袖に触れこぼれ散る室の花 みづほ
一 白き笠胸に海見る遍路かな 牧羊
一 風強し薄氷ひかる橋の上 広
一 行く道や枯野に松の道しるべ 利水
一 夜の更けて風冴返る山の宿 晃子
一 清元の会料峭の紀尾井坂 たか二
一 青空に飛び立つ雀寒の明け 兆弥
(特選一) 一 薄氷にのりて鴉のおよび腰 まもる
一 囀や耳にとどいた暖色系 上馬の
薄氷や喜寿にして病を得たり 広
朝ぼらけ池に輝く薄氷 兆弥
薄氷に乗って街並み破壊せり 恵那
三間の坂にも名前梅開く 雪子
草餅とペペロンチーノ並びをり 恵那
春節や鮨に列なす異邦人 まもる
紅梅やおぼこのやうに開きけり 利水
薄氷や小川の水の滲みゐる みづほ
早春や裾のサテンが消えた街 牧羊
さくら句会【第百四十七回】
平成三十一年一月二十八日
於:桜新町区民集会所第一会議室
一月の句会は、八名の参加者、四名の投句により兼題の『福寿草』と自由句二句を持ち寄り行われました。
披講 下田晃子(俳号・晃子)
四 木鋏の音はじけたる寒の入り 利水
(特選二) 三 寒茜遠く影絵のごとき富士 晃子
三 嫁かぬ娘の集ふ座敷や初笑 雪子
(特選二) 三 三代の屋号を閉じて春寒し 上馬の
三 一月や朱塗りの下駄でバスにのる 上馬の
二 誰が踏みし跡やひとすじ雪の原 雪子
二 群れ水仙風のかたちに波なせり 勝
二 今朝の句の一句を添へし初日記 晃子
二 道問ふて道連れとなり福寿草 勝
二 しぐるるや砂場に光る耳飾 広
一 庭石の窪みに張りし初氷 まもる
一 分け出づる勁き命よ福寿草 広
一 瑞垣にトイプードルと福寿草 たか二
(特選一) 一 寒卵届きて朝のかけごはん 兆弥
一 活気めく街の遠きに山眠る みづほ
一 福寿草門なき家に住み古りて 広
一 日脚伸ぶ小三治枕噺長々と たか二
一 隣り合ふ児に笑みもらふ初電車 まもる
一 百年を生きる覚悟や福寿草 雪子
(特選一) 一 全集を買はぬ古書店寒波くる たか二
一 万両や鉢に値札の八百円 兆弥
(特選一) 一 冬雉子のひと声貫けり草茫々 勝
(特選一) 一 つつましくされど明かるし福寿草 まもる
一 梅の花ぽつりぽつりと日を刻む 利水
陽を受けて蕾を開く福寿草 兆弥
道行や舞台の袖の福寿草 利水
初春や爺ばかりのクラス会 恵那
福寿草横丁に遊ぶ五六人 上馬の
懐に知足忍ばせ初仕事 牧羊
如月の行間埋める申告書 恵那
平成の街並み靄る福寿草 恵那
着膨れやしりとり聞こゆドアあたり 牧羊
福寿草主役にしたき黄の力 みづほ
七草粥早ばやと時過ぎゆきぬ みづほ
晩学や独り楽しむ福寿草 牧羊
小箪笥の上に置かれし福寿草 晃子