
春暖ではなく「春の雪」(豊饒の海)となった8日午前、3月例会がいつもの三軒茶屋の区民センターでありました。発表者の佐々木誠さん(92教育)を含め、20人が参加し、講題への高い関心を伺わせました。今回のテーマは「日本近代医学史の舞台裏」。佐々木さんは幕末・維新史に埋もれた佐賀藩出身の「相良知安」を舞台回しに、解題を進めました。
近代化を一気に進める明治日本がお手本にした国は、憲法、陸軍はドイツ(プロシア)、海軍は英国でしたが、西洋医学の受け入れがどのような変遷を辿ったのかは意外と知られていません。佐々木さんは幕末の佐賀藩が工業技術を含め、最先端の技術を擁していた事実を指摘。維新当初は英国式が優勢でしたが、最終的にドイツ式医学を導入するに至った経緯や相良の役割を分かりやすく解説していきました。大きな足跡を残したにも関わらず、相良が晩年、不遇だったエピソードなども紹介し、会員の関心を巧みに誘いながら2時間の発表を終えました。
個人的には、病弱だった明宮(はるのみや・後の大正天皇)が漢方で奇跡的に回復し、明治天皇が漢方に信頼を置いていたことや、戦死よりも戦病死の方が多かった当時の医療事情が再確認でき、有意義な日でした。
次回の例会は、西川正敏さん(69商)の「太平洋戦争の日本の隠れた名将3人」です。
(藤方聡美/記)